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内科の病気

犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)について

犬の副腎皮質機能亢進症について


副腎皮質機能亢進症はクッシング症候群とも呼ばれ、臨床の現場でも決して珍しい病気ではありません。
この病気のお薬を投与中の飼い主様も、少なくはないと思います。

この副腎皮質機能亢進症について、珍しくはないだけに診断・治療もパターン化しがちですが、一昨年、昨年と論文が発表されています。

「トリロスタン治療中の犬の血圧の変化」
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jvim.15978

「コルチコトロピン放出ホルモンテストの有用性」
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.16336


今回は改めて、この副腎皮質機能亢進症について、お話しをさせて頂きます。



<副腎とは?>

副腎とは、腎臓の横にある米粒ほどの大きさの臓器です。

米粒ほどの大きさですが、体に必要な様々なホルモンを分泌する、とても重要な内分泌器官です。

副腎皮質機能亢進症では主にコルチゾールというステロイドホルモンが過剰に分泌されてしまいます。
その結果、体には様々な症状が発現します。



<様々な症状とは?>

ホルモンの分泌に異常を来たす病気は慢性的にゆっくり進行するので、病気に気付きにくいのが一つの特徴です。

副腎皮質機能亢進症については、主な症状に多飲多尿・多食があります。
よく食べてよく飲む、これが病気のサインとは考えにくいですよね。

・多飲
・多尿
・多食
・腹囲膨満
・脱毛
・筋肉量の減少
・呼吸促迫など

これらは全てコルチゾールが過剰に分泌された結果、生じる症状になります。




<過剰に分泌される原因は?>

過剰に分泌される原因を知るには、副腎がどのような過程でホルモンを分泌するかを知る必要があります。



視床下部と下垂体は、頭の中の脳の一部になります。
ここから放出されたホルモンが血管を流れ、副腎にたどり着きます。

そうすると、副腎はコルチゾールというホルモンを分泌し、全身に巡ります。

副腎皮質機能亢進症の約8割は、下垂体からのホルモン(ACTH)の過剰分泌によって、結果的に副腎からのコルチゾールの分泌が過剰になります。

残りの2割は副腎自体が腫瘍化し、コルチゾールを過剰分泌します。

その結果、上述のような複数の症状が出たり、また、二次的に糖尿病や膵炎などの原因にもなります。



<二次的に発症しやすくなる病気とステロイド>

副腎皮質機能亢進症によって引き起こされる症状は見た目の話しですが、ここではこの病気の何が問題なのか、体の中で起こる変化をお話しします。

・糖尿病
・膵炎
・腎障害
・肝障害
・血栓塞栓症
・皮膚の石灰化など

これらが代表的な続発症(ある病気が原因となり、別の病気が発症すること)となります。

これらの病気はステロイドを長期服用した場合の副作用と同じものになります。
つまり、副腎皮質機能亢進症は、ステロイドの副作用そのものと言えるのです。



<副腎皮質機能亢進症の治療について>

副腎皮質機能亢進症の治療については、一般的にはコルチゾールの分泌を抑えるお薬による内科治療になります。

下垂体や副腎に外科的なアプローチをする場合もありますが、限られた施設、術中や術後のリスクが伴うなど、一般的ではありません。

それに比べると、コルチゾールの分泌を抑える内科治療は、体への負担は少なく、効果的な治療になります。



<最後に>

副腎皮質機能亢進症やクッシング症候群と言われるこの病気は、決して珍しい病気ではありません。

よく食べよく飲むので病気とは気付かれにくく、発見が遅れがちになる事も多いです。

体の被毛が薄くなってから(かなり進行してから)気付かれ、受診される事も少なくありません。

腹部超音波検査と血液検査で診断ができる病気なので、中齢以降の子で、上述の症状が一つでも当てはまる場合は、かかりつけの先生に相談されてみてはいかがでしょうか。

当院、総合診療科でもご紹介、セカンドオピニオンを受け付けております。
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総合診療科
獣医師 河野和一郎